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子どもと一緒にワイルドな自然を!知夫里島の「赤ハゲ山」へ

    • 知夫村
子どもと一緒にワイルドな自然を!知夫里島の「赤ハゲ山」へ

知夫里島の名所「赤ハゲ山」は知夫村の人々の暮らしと工夫、地形の面白さや絶景が楽しめるスポットとして知られていますが、実はサファリパーク並みにたくさんの動物とふれあえる自然体験スポットでもあります。知夫里島に住むハナ団子がその魅力を紹介します。

取材・ハナ 団子
知夫里島在住。緑が好き。雑貨が好き。ハーブティーが好き。写真を撮るのが好き。食べるのが好きだけど食わず嫌い。ゴロゴロするのが至福の時間。知夫里島で七味作り体験をしている。たくさんの国に旅行して異文化に触れたい。どんな時も芸術とクスッとは大切だと思っている。

ヨーロッパを思わせる赤ハゲ山。山頂の展望台からは360度のパノラマが!


隠岐4島の中でいちばん小さな島

島根県隠岐諸島の1つ、知夫里島。人口は約630人、牛600頭、タヌキ2000匹など人間より動物の方が多く、手付かずの自然が多く残る素朴な島です。2013年に隠岐世界ジオパークに認定され、島全体が大山隠岐国立公園になっています。

知夫里島で最も高い赤ハゲ山は、標高324.5m。山頂からは360度の景色が楽しめます。

赤ハゲ山という名のとおり、木々はほとんど生えていません。
1504年の山火事で木々が焼き払われ、現在のような牧草地になったと言われています。

いざ、牛の王国へ!

それでは、サファリパークに向かいましょう!

山へ登る前にまずは買い出しへ。赤ハゲ山の山頂には自販機がないので、来居(くりい)港、郡(こおり)地区、仁夫地区の商店か自販機で飲み物を買ってから出発しましょう。

仁夫(にぶ)地区にある自動販売機

赤ハゲ山に向かう途中、四季折々の花や隠岐の固有種の植物、のどかなカントリーロードの景色を楽しめます。

カントリーロードのような道

上に行くほど視界が開け、思わずウオ~っと叫びたくなりますよ。写真では良さが伝わらないので、実際に皆さんの目で見てくださいね。

さて、いよいよ山頂に近づいてくるとテキサスゲートが見えてきます。

牛と人の境界線であるテキサスゲート

知夫里島の牛は完全放牧のため、牛と人の生活区域を区切るテキサスゲートが設置されています。

テキサスゲートより先は、牛の王国!車より牛が優先ですよ。

10月中旬ごろの赤ハゲ山。ほんのり茶色くなった牧草地が広がります


かなり至近距離で牛に出会えます。牛の息使いまで聞こえてハラハラ感満載

近すぎて恐怖感もありますが、赤ハゲ山にいる牛は人に慣れており穏やかです。滅多に怒ることはありませんが、子牛を連れている母牛には若干注意が必要です。見つめるだけで威嚇することもあります。どの牛も放牧されているので、触ったりエサを与えたりするのはNGです。

牛の群れに遭遇。写真は8月で草が青々としている

牛が道を塞いで通れない場合は、ゆ〜っくり車でギリギリまで牛に近づいてください。すると、よっこらしょっと牛が退いてくれます。それでも退いてくれない場合は、「ごめんね~。ちょっとどいて~。」という気持ちでドアを叩き音を出してみてくださいね。

車で一気に山頂に行くのもいいですが…

車から降りて放牧地を歩くのも!

11月中旬の赤ハゲ山

牛が近いので怖がるお子様もいるかもしれませんが、よりサファリパーク感を味わえます。

11月中旬の牧草地

草をはむ牛をじっと見ていると、大きな黒目でこちらをちらり。迫力満点です。

山頂の少し手前(赤壁への分かれ道)で車を停めて、歩いても楽しい!
ですが、やっぱり親子の牛には注意が必要です。

親子の牛が待ち構えている


じっと親子の牛に見つめられる


カメラ目線をくれる子牛

と思えば、カメラ目線をくれる子もいます。

11月中旬

秋ならば、のんびり松ぼっくりを拾いながら登るのもいいですね。拾った松ぼっくりで思い出の作品を作るのもいいかも!


あと、お子様が好きなウンチというワード。道路には牛のウンチがたくさんあるので、面白い形を見つけるのもアリです。意外にもアンモナイトのような形を発見。


うちの3才の娘は、絶景よりウンチに興味をもっていました。

汚い話はこれくらいにして……


空へ向かってGO

牛と草と空しか見えない道を走るのも、何とも言えない解放感です。柵がないので、お子様は注意してくださいね。

雄大な景色のなかでランチタイム

雄大な景色のなかでランチタイム
赤ハゲ山山頂にてランチタイム。奥に見えるのは、西ノ島。向かって右側は島前(どうぜん)カルデラ

来居港から山頂までは車で約30分(買い出し時間含む)で到着。日本海に囲まれた赤ハゲ山では、のんびり歩く牛と島前カルデラをバックに、お昼ご飯を食べるのもおススメです。

時折、エサをくれと言わんばかりに、モーモーと牛の鳴き声が聞こえてきます。(かわいそうでもエサはあげないでくださいね。)

はてしない海の絶景の中でお弁当を食べていると、人間はなんて小さいんだと感じます。海は広いな、大きいな、を体感できますよ。ひそかにおススメする家族写真スポットです。

山には飲食店がないので、
 ●商店
 ●ダイニングカフェのDONAさん(営業時間11:30~13:30。定休日 月曜日。冬季休みがあります)
 ●レストハウス神島(営業時間11:30~13:15。定休日 土・日曜日)

のいずれかで、お弁当をゲットしてください。

テイクアウトは事前予約がスムーズです。なお、飲食は店内で済ませたい方は、レストハウス神島、ダイニングカフェDONA(要予約)なら店内でランチを食べることもできます。

このほか、赤ハゲ山を楽しむポイントもぜひ参考にしてみてください。

~赤ハゲ山を楽しむポイント~

*持ち物
・ウィンドブレーカー(山頂は風が強いのであると安心)
・帽子(日影がないのでトレッキングを楽しみたい方は必須)
*服装
・長ズボン(草むらにはダニ、夏場はハチもいます)
・汚れても良い履きなれた靴(道には牛のウンチがあります)
*設備
・赤ハゲ山山頂に公衆トイレがあります。
・強風の場合は、展望台の下に管理棟という名の休憩室があります。ここでお弁当やおやつを食べる事ができます。

なぜ?小さな島に2,000匹も生息しているタヌキ

赤ハゲ山ではタヌキを見ることもできます。

タヌキはもともと島にいたわけではなく、約70年前に本土から夫婦のタヌキが村へ贈られてきました。檻で飼っていたところ脱走。自然が豊かでエサがたっぷりある上、苦手な犬も少なかった島はタヌキにとって好条件でした。その結果、異常に繁殖したそうです。

隠岐諸島の中で知夫里島にしか生息しないタヌキ

タヌキは牛と比べて臆病者なので、なかなか写真を撮るのが難しいです。が、時々、牛が牧草を食べている近くを、タヌキの夫婦がゆっくり横切っていくのどかな光景を目にすることができますよ。

赤ハゲ山で見られる「万里の長城」

赤ハゲ山には「万里の長城」のような光景も見られます。

2キロメートル続く石垣は島独特の風景

火山島という痩せたこの土地と平地が少ない地形で、生活するために作られた石垣。

山を石垣で区切り、牛の放牧、大豆、稗・粟、麦を効率よく輪転する牧畑(まきはた)農法の名残で、昔は万里の長城と呼んでいたそうです。今では名垣(みょうがき)と呼ばれています。

空と海に向かって伸びる様は、『天空の城ラピュタ』を思い浮かべます。標高が高く、草があり、石垣だからでしょうか…

今は放牧地になっており、牛の牧柵代わりに利用されています。

美しいだけではない、営みに裏付けされた絶景

美しいだけではない、営みに裏付けされた絶景
ランチタイムの写真に写っていた島前カルデラ。正面に見えるのは西ノ島


島前カルデラは約550万年前にできました。カルデラとは火山の活動によってできた大きな凹地のことで、隠岐では西ノ島町・海士町・知夫村の3島からなる外輪山と内海から成り立っています。外輪山の中が海というのは大変めずらしく、世界でもギリシャのサントリーニ・カルデラの2つしかありません。

南側の景色。放牧地・万里の長城・中央に見えるのは無人島の神島

青い海に青い空、緑の放牧地。日本と思えない広大な景色に圧倒されます。

山の中腹に佇む牛と、雲が厚い冬にしか見ることができない天使のはしご


赤ハゲ山に並ぶ牛たち

まるで西部劇のようでカッコイイ!

北西の日本海の冷たい風や波によって削られた岸壁。自然に逆らわず、活かすように生きてきた知夫里島の人々の暮らしや工夫が、ここでしか味わえない絶景と空気感を作り出しているのです。

赤ハゲ山は子どもたちと楽しめるのはもちろん、写真好きでなくとも思わずシャッターを押してしまう。人を惹きつける景色がたくさんあります。

ぜひあなただけの知夫里島を持って帰って下さいね。

*1月から5月の連休までは草がないため、赤ハゲ山に牛はいません。
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